相続開始~相続方法の決定

相続の開始

○相続の発生原因

 相続は人の死亡によって開始します。ここでいう「人」とは「自然人(生きている人間)」を指し、会社などのような「法人」は含まれません。また、「死亡」については日本の法律では明確な定義は書かれておらず、医師が死亡していると判断すれば死亡していることになります。

 ちなみに、戦前の日本では「隠居(いんきょ)」といって、戸主が生前に家督を家督相続人(おもに長男)に相続させる制度がありました。しかし、現在の日本では、死亡以外に相続を発生させる制度は基本的には存在しません。ただし、例外的に、ある人が行方不明となり、その生死が明らかでないときには、その行方不明者を死亡したものとみなして相続を開始させる「失踪宣告(しっそうせんこく)」という制度があります。

 また、失踪宣告と似た制度として「認定死亡」というものもあります。これは、水難、火災その他の事変によって死亡したことが確実とみられるが、遺体を確認できないような場合に、その取り調べを行った官公署が死亡地の市町村長に死亡の報告をすることによって行われるものです。認定死亡がなされると、法律上は死亡したものとされますので、相続が開始されます。

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○同時死亡の推定

 遺産相続では、複数の親族が同じ日に死亡してしまった場合、死亡した時刻の前後によって相続人や法定相続分が異なることがあります。しかし、現実には、事件や事故、戦争や災害によって複数の人が同じ日に死亡した場合、どちらが先に死亡したのかが判明しないこともあります。このような場合、これらの者は同時に死亡したものと推定して、相続人や法定相続分を確定させます。これを「同時死亡の推定」といいます。

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遺言書の有無の確認

○遺言書の有無の確認方法

 相続が発生した際には、亡くなった人(被相続人)が生前に遺言をしていたかどうかによって、遺産相続の方法や手順が大きく異なってきます。そのため、まずは被相続人の遺言書の有無を確認する必要があります。

 被相続人が生前に遺言書の原本やその写しを誰かに預けていたり、保管場所を告げていたりした場合は、その遺言書を探し出して内容を確認すればいいのですが、遺言をしていたかどうかが明らかでない場合や、遺言をしたこと自体は相続人等に告げていたものの、その保管場所が明らかではない場合は、遺言書の有無を確認したり、保管場所を見つけ出す必要があります。これは、遺言書の種類によって方法が異なります。

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○遺言書が2通以上見つかったら

 遺言は、作成した本人が生きているうち(遺言能力があるうち)は、何度でも作成し直すことができます。そして、本人の死後に、内容の矛盾する遺言が複数発見された場合には、最も新しい(死亡日に近い)遺言が優先します。そのため、被相続人の遺言書やその写しが手元にある場合であっても、その遺言書が最も新しいものかどうかについては、念のため確認する必要があります。

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○遺言書の検認

 遺言書保管制度を利用していない自筆証書遺言については、遺言者の死亡後に管轄の家庭裁判所で「検認(けんにん)」という手続を受ける必要があります。検認とは、家庭裁判所で、裁判所の職員と相続人らが立ち会って遺言書を開封し、遺言書の状態や内容を確認して、検認後に遺言書が破棄されたり改ざんされたりすることを防ぐための手続です。したがって、その遺言書が法的に有効かどうかを判断する手続ではないのですが、検認を受けておかないと、その遺言書を利用して不動産の名義変更(相続登記)をしたり、預貯金の口座解約や払い戻しを受けたりすることができません。

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相続人の調査・確認

○相続人の調査・確認

 遺産相続では、まずは法定相続人を確認する必要があります。被相続人の配偶者や子などの親族にとっては、相続人が誰であるかは明らかかもしれませんが、被相続人の遺産である不動産の相続登記や預貯金の解約などをするためには、相続人が誰であるかを戸籍謄本などで客観的に証明する必要があります。

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○戸籍収集にかかる手間

 戸籍収集は、一般に考えられているよりも、非常に手間がかかります。そのため、戸籍謄本等の請求も、当事務所のような専門家に一括して依頼することをお勧めします。

 また、戸籍収集と相続人調査(だれが相続する権利があるかの確認)、相続関係説明図(いわゆる「家系図」のうち、相続手続きに必要な部分を記載した図)の作成、法定相続情報(相続関係説明図について、法務局で証明を受けたもの)の発行申請も承りますので、ぜひご相談下さい。

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法定相続人と相続分

○法定相続人と相続分

 民法では、相続人や相続分を、以下のように定めています。

相 続 人 法定相続分 備 考
第1順位 配偶者 1/2  
子(養子・婚外子・胎児を含む) 1/2 人数で按分する
第2順位 配偶者 2/3  
直系尊属(父母・祖父母) 1/3 親等の近い者で按分する
第3順位 配偶者 3/4  
兄弟姉妹 1/4 人数で按分する
  配偶者 全 部 他に相続人がいない場合

・順位が上の相続人がいない場合に限り、下の順位の者が相続人となります。
・配偶者がいない場合は、各順位の相続人の人数で按分します。
・胎児は、相続については、すでに生まれたものとみなします。
・子が先に死亡している場合は、孫やひ孫が相続人となります(代襲相続)。
・兄弟姉妹が先に死亡している場合は、甥や姪が相続人となります(代襲相続)。
・親の片方のみが同じ兄弟姉妹は、双方が同じ兄弟姉妹の半分となります。

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○特別受益と寄与分

 相続人の中に、結婚の費用や住宅の取得資金、日常の生活費として被相続人から贈与を受けた人がいる場合、相続人同士で不公平にならないように、これらの財産は「遺産を先もらいしたもの(特別受益)」として、いったん遺産に戻したうえで各相続人の相続分を計算します。これを「特別受益の持ち戻し」といい、そのような生前贈与を受けた相続人のことを「特別受益者」といいます。

 ただし、婚姻期間が20年以上の夫婦間で2019年7月1日以降に居住用不動産の遺贈や贈与がされた場合には、その不動産については原則として特別受益に含めない(持ち戻し免除)意思表示があったものとして扱われます。

 一方、民法では、相続人の中に、被相続人の事業を手伝うなどして、その財産を増やすことに特に貢献した人や、被相続人の療養看護などに努めて、その財産を維持することに特に貢献した人(特別の寄与をした人)がいるときは、その「手柄のあった分(寄与分)」をその人の法定相続分に上乗せして、遺産を相続することを認めています。

 また、相続人以外の親族(例えば長男の妻)が被相続人の療養看護などを無償でしていた場合には、相続人に対して相応の金銭の支払いを請求することができる場合があります(特別の寄与制度)

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○相続人が誰もいない場合は?

 被相続人に関連する戸籍謄本等を調査した結果、相続人が誰も確認できないという事例もあります。例えば、被相続人は独身で(または配偶者と離婚や死別していて)実子や養子もいたことがなく、父母や祖父母はすでに亡くなっており、もともと兄弟姉妹もいないという場合です。

 このような場合、被相続人の遺産を処分するためには、家庭裁判所に申し立てて、「相続財産管理人」を選任してもらう必要があります。

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相続財産の把握

○遺産の分類

 相続財産(遺産)とは、被相続人(亡くなった人)が残した「権利と義務」のことをいいます。つまり、相続財産にはプラスの財産だけでなくマイナスの財産も含まれます。そのため、被相続人に不動産や預貯金などの財産があったのかはもちろん、借金を残していないかや、借金の連帯保証人になっていなかったかどうかを調べる必要もあります。

 また、そもそも遺産には該当しないものもあります。例えば、受取人が指定されている生命保険の死亡保険金については、そもそも民法上の遺産とはならないので、遺産分割をする必要もなく、受取人として指定された人が単独で生命保険会社に保険金を請求することができます。

 なお、墓地や仏壇、神棚などの財産は「祭祀財産(さいしざいさん)」といって、相続財産とは別枠で承継者を決めることになります。

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○遺産の調査方法

 不動産については、毎年春頃に送られてくる固定資産税の納付書に同封されている課税明細書や、各市町村に請求することができる固定資産税課税台帳(名寄帳)を参考にして被相続人名義の不動産を特定し、法務局で不動産ごとに登記事項証明書を請求して調査、確認をします。

 預貯金については、まずは、被相続人の自宅などから通帳やキャッシュカードを探すところから始まります。また、固定資産税や自動車税などの税金が自動引き落としになっている場合は、納税通知書に引き落とし口座として金融機関名や支店名が書かれていますし、水道光熱費やNHKの受信料、クレジットカードの明細書などからも、領収証などから引き落とし口座の情報を得ることができます。そのため、被相続人宛の郵便物は確認することをお勧めします。

 なお、借金も相続の対象となりますので、遺品整理の際に契約書、カード類、請求書、督促状などが発見された場合は、必ずその業者に債務残高などを確認することが必要です。

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相続方法の決定

○遺産相続の方法

 遺産相続では、被相続人が残した財産や債務を、原則として相続人がすべて引き継ぐことになります。被相続人の財産や債務を相続人が無条件・無制限に引き継ぐことを、相続の「単純承認」といいます。

 これに対し、財産よりも借金が多いなどの理由により遺産を相続したくない場合は、相続開始を知った時から3カ月以内に管轄の家庭裁判所で所定の手続きを行うことで、財産も債務も一切相続しないこともできます。これを「相続放棄」といいます。

 また、被相続人の残した財産にプラスの財産とマイナスの財産があった場合、プラスの財産の限度においてマイナスの財産を弁済する責任を負い、それ以上は責任を負わないという方法もあります。これを「限定承認」といい、相続放棄と同様に相続開始を知った時から3カ月以内に管轄の家庭裁判所で所定の手続きを行う必要があります。

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○熟慮期間の延長

 相続人が、相続開始を知った時から3か月以内に単純承認、相続放棄、限定承認のいずれかを選択することが難しい場合は、その3か月の期間内に家庭裁判所に申し立てることによって、期間を延長してもらうことができます。

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