相続人の調査・確認
○相続人の調査・確認
遺産相続では、まずは法定相続人を確認する必要があります。被相続人の配偶者や子などの親族にとっては、相続人が誰であるかは明らかかもしれませんが、被相続人の遺産である不動産の相続登記や預貯金の解約などをするためには、相続人が誰であるかを戸籍謄本などで客観的に証明する必要があります。
○戸籍謄本が必要になる場面
・遺産分割協議(誰がどの財産を相続するか決める話し合い)
・遺産分割調停(遺産分割協議がまとまらない場合に家庭裁判所に申し立て)
・特別代理人の選任(相続人の中に未成年者が含まれる場合に代理人を選任)
・遺言書の検認(自筆証書遺言を家庭裁判所に提出して状態を確認する手続)
・相続放棄(借金などの負債を背負わないように相続する権利を放棄すること)
・不動産の相続登記(故人名義の土地や建物を、相続人の名義にする手続き)
・預貯金の解約(故人の預貯金口座から金銭を引き出すこと)
・相続税の申告(相続人の資産や負債を確定の上、相続税を計算して納付)
また、たまにあるのですが、被相続人には実は再婚歴があり、前妻(前夫)との間にも子がいることを、被相続人の死亡時の配偶者やその間に生まれた子が知らなかったという事例や、被相続人には婚外子(法律上は非嫡出子といいます)がいることが、その死後になって発覚したという例もあります。
さらには、被相続人には配偶者や子がおらず、その父母や祖父母はすでに亡くなっている場合、被相続人の兄弟姉妹が相続人となり、その兄弟姉妹も亡くなっているような場合は、その子(被相続人にとっては甥や姪)が相続人となりますが、親族間であまり交流がないような場合は、被相続人の兄弟姉妹が生きているかどうかや、甥姪がどこに住んでいるのかがわからないといった事例もあります。
そのため、以下のような手順で戸籍謄本などを取り寄せて、相続人を調査する必要があります。
1. | 亡くなった方の「戸籍謄本」「除籍謄本」「改製原戸籍」等を、出生から死亡まですべて取得します(通常、この段階で両親と子供、配偶者が確認できます)。 |
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2. | 被相続人よりも先に死亡している子がいる場合、その子の出生から死亡までの戸籍謄本等もすべて取得します(これにより、代襲相続人が確認できます)。 |
3. | 子(代襲相続人を含む)がいない場合は、父母や祖父母などの直系尊属が相続人になりますので、必要に応じて戸籍等を取得します。 |
4. | 直系尊属が全員亡くなっている場合は、その直系尊属の出生から死亡までの戸籍謄本をすべて取り寄せることで、被相続人の兄弟姉妹を調査します。 |
5. | 被相続人よりも先に死亡している兄弟姉妹がいる場合、その兄弟姉妹の出生から死亡までの戸籍謄本等もすべて取得します(これにより、代襲相続人が確認できます)。 |
○戸籍収集にかかる手間
そのような戸籍収集ですが、実は一般に考えられているより、非常に手間がかかるのです。例えば、
- 相続では、被相続人(死亡された方)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等が必要になります、被相続人が結婚や転籍などで戸籍を別の役所に移していた場合には、それらの戸籍謄本等を収集するために複数の役所に戸籍の請求をかけなければなりません。
- 戸籍謄本等の請求手続きは、役所が開庁している平日の日中に行わなければなりません。
- 一箇所の役所で戸籍収集が完結することは稀で、ほとんどの場合は県内遠方の役所や県外などの役所からも請求しなければなりません。
- 遠方の役所に戸籍を請求するための郵送手続も、当該役所に確認を取りながらになるために非常に時間がかかります。
- また、遠方の役所からの戸籍収集が必要な場合に、戸籍収集に掛かる費用は「小為替」(購入や換金は郵便局でのみ可能)を利用するため、郵便局にも訪問する必要があります。
- 相続の順番によっては、追加で戸籍を収集しなければなりません。
- 過去の戸籍を集めるためには、死亡時の戸籍から順番に遡って請求をしますが、昔の戸籍は手書きで読みづらく、どこの役所で誰が筆頭者の戸籍謄本等を取ればいいのかがわからないこともよくあります。
- 数次相続(以前に亡くなった方の相続手続をせずに放置し、新たに亡くなった方と一緒に相続手続をすること)では、さらに相続関係が複雑化し、相続の専門知識がないと戸籍収集が難しいこともあります。
そのため、戸籍謄本等の請求も、当事務所のような専門家に一括して依頼することをお勧めします。
また、戸籍収集と相続人調査(だれが相続する権利があるかの確認)、相続関係説明図(いわゆる「家系図」のうち、相続手続きに必要な部分を記載した図)の作成、法定相続情報(相続関係説明図について、法務局で証明を受けたもの)の発行申請も承りますので、ぜひご相談下さい。