相続財産の把握

○遺産の分類

 相続財産(遺産)とは、被相続人(亡くなった人)が残した「権利と義務」のことをいいます。つまり、相続財産にはプラスの財産だけでなくマイナスの財産も含まれます。そのため、被相続人に不動産や預貯金などの財産があったのかはもちろん、借金を残していないかや、借金の連帯保証人になっていなかったかどうかを調べる必要もあります。

 また、そもそも遺産には該当しないものもあります。以下に主なものを掲載いたします(民法上の区分です)。

1.プラスの財産

不動産(土地・建物) 宅地・居宅・農地・山林、店舗・貸地・貸家など
不動産上の権利 借地権・借家権・地上権・配偶者居住権など
金融資産 現金・預貯金・有価証券・株式・国債・社債など
動産 自動車・家財・骨董品・宝石・貴金属など
その他 債権・貸付金・売掛金・手形債券・賃借権・ゴルフ会員権・著作権・特許権など

2.マイナスの財産

借金 借入金(住宅ローン、自動車ローン、カードローンなど)・買掛金・手形債務・リース未払金など
公租公課 未払いの所得税・住民税・固定資産税など
保証債務 住宅ローンの保証、事業資金の保証など
その他 未払費用・未払利息・未払い医療費・預かり敷金・損害賠償債務など

3.相続財産に該当しないもの

一身専属権 財産分与請求権・扶養請求権、生活保護受給権
身元保証 身元保証債務
生命保険金 受取人指定のある生命保険金
祭祀財産 墓地、霊廟、仏壇・仏具、神具など祭祀に関するもの

○遺産の調査方法

1.不動産の調査方法

 不動産については、毎年春頃に送られてくる固定資産税の納付書に同封されている課税明細書や、各市町村に請求することができる固定資産税課税台帳(名寄帳)を参考にして被相続人名義の不動産を特定し、法務局で不動産ごとに登記事項証明書を請求して調査、確認をします。なお、登記の内容については一般財団法人民事法務協会が運営する登記情報提供サービスを利用すれば、インターネット上からも確認することができます(もっとも、未登記建物の場合は登記情報には記録されていません)。

 ただし、名寄帳は、あくまでもその市町村に存在する不動産しか掲載されませんので、被相続人が複数の市町村に不動産を所有している場合、その市町村ごとに名寄帳を請求する必要があります。

2.預貯金の調査方法

 預貯金については、まずは、被相続人の自宅などから通帳やキャッシュカードを探すところから始まります。また、固定資産税や自動車税などの税金が自動引き落としになっている場合は、納税通知書に引き落とし口座として金融機関名や支店名が書かれていますし、水道光熱費やNHKの受信料、クレジットカードの明細書などからも、領収証などから引き落とし口座の情報を得ることができます。そのため、被相続人宛の郵便物は確認することをお勧めします。

 あとは、被相続人の自宅や勤務先の周辺にある金融機関に、被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本や、自分がその相続人であることを証明する戸籍謄本と身分証明書などを持参して、直接訪問して口座の有無を調べてもらう方法もあります。この場合、ほとんどの金融機関では、自分が訪問した支店でない支店の口座であっても、口座の有無自体は教えてくれます。

 すこし厄介なのは、通帳やキャッシュカードが発行されない「インターネット専業銀行」です。被相続人が使用していたパソコンやスマートフォンなどを起動することができれば、ウェブサイトの閲覧履歴や「お気に入り」をチェックして、アクセスしていないかを確認することになります。

 なお、口座のある金融機関については、通帳がある場合はその通帳で、ない場合には取引明細書の交付を受けて、入出金の記録を調べることをお勧めします。この記録を追跡することで、後述する株式や有価証券の有無や、借金の有無がわかることがあります。

3.株式・国債・有価証券などの調査方法

 株式や有価証券についても、基本は被相続人の自宅などで証券類や関係書類を探すところから始まります。また、証券会社などは運用状況の報告書を定期的に郵便などで送ってきますので、郵便物も入念に確認します。

 ただし、最近では株式は電子化され、運用状況についてもウェブサイト上で確認するところも多いと思います。この場合は前述の通り、パソコンやスマートフォンからウェブサイトの閲覧履歴も、確認できるなら確認した方がいいでしょう。

 また、配当金などが振り込まれている可能性があるので、預貯金の入出金履歴の調査も重要となります。

4.動産の調査方法

 自動車については、被相続人が「隠し持っている」ということは、あまり考えにくいですが、車検証などで名義の確認は必要です。自動車の場合、「使用者」と「所有者」が一致しないことは、よくあるからです。「所有者」がディーラーや信販会社の場合は、自動車ローンを完済していない可能性もあるので、名義人に確認する必要があります。

 その他、被相続人の自宅内にある動産については「発見できない」ということはあまりないですが、例えば骨董品や貴金属のように「価値がよくわからない」ことは比較的多いと思われます。そのため、処分前に信頼できる専門業者に査定してもらった方が良いでしょう。

5.借金の調査方法

 住宅ローンについては、その物件の登記事項証明書を法務局から取り寄せて、抵当権が設定されているかどうか、設定されている場合は抵当権者である金融機関はどこかを確認し、その金融機関に残高を確認します。

 自動車ローンについては前述の通り、まずは車検証を確認します。ただし、銀行系の自動車ローンでは、「使用者」も「所有者」も被相続人名義のこともありますので、注意が必要です。なお、住宅ローンも自動車ローンも返済は口座引き落としであることがほとんどですから、預貯金口座の入出金履歴を確認し、毎月同じような日に同じような金額が引き落とされていれば、引き落としている会社を通じて確認が取れます。

 また、銀行系のローンやクレジット・カードによる債務についても、預貯金からの自動引落しによって返済することが多いため、被相続人の通帳の入出金欄を丁寧に確認して調査することになります。なお、遺品整理の際に契約書、カード類、請求書、督促状などが発見された場合は、必ずその業者に債務残高などを確認することが必要です。

 しかし、消費者金融からの借金で、借入や返済を店頭や専用ATMを通じて現金で行っていた場合には、通帳には取引の形跡が残らないことになります。さらに、このような借金は家族に隠れて行われる傾向があるため、契約書なども本人が処分していたり、カード類も隠されていたりして、家族がそのような債務の存在を知らないことも多いと思われます。そこで、このような場合は、信用情報機関に信用情報の開示請求を行うという調査方法があります。信用情報機関には「全国銀行個人信用情報センター」「株式会社シー・アイ・シー」「株式会社日本信用情報機構」があり、信用情報には対象者の借入先業者名や契約日、債務残高などが記載されています。信用情報の開示請求は本人からはもちろん、本人の相続人から行うことも出来ます。

 もっとも、住宅ローンや消費者金融からの借金には、借入時に団体信用生命保険が付加されていて、債務者本人の死亡により保険金で残った債務が返済される場合もあります。そのため、このあたりも確認する必要があります。

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