遺産分割協議の注意点
遺産分割協議の注意点
遺産分割協議を行う場合、いくつか注意しなければならない点があります。
■必ず相続人全員で行う。
(必ずしも、一堂に会して話し合う必要はなく、全員が合意している内容の協議書を、郵送などの持ち回りで署名・押印する、という形をとっても良いです) 。
■「誰が」「どの財産を」「どれだけ取得するか」を明確に取り決め、遺産分割協議書に記載する。
■後日発見された遺産(借金が出てくる場合もある)を、どのように分配するかも決めておく。
(記載漏れがあっても、改めて協議書を作成しなくて済むため)。
■相続人の中に未成年がいる場合は、特別代理人(通常は親権者)が遺産分割協議に参加するか、未成年者が成年に達するのを待ってから遺産分割協議をする。
■未成年者が相続人で、その親権者も相続人である場合は、互いに利益が対立することになるため、家庭裁判所に特別代理人の選任申立を行う(未成年者である相続人が複数いる場合は、それぞれ別の特別代理人が必要となります)。
■相続人に胎児がいる場合には、胎児が出生してから遺産分割協議を行う。
胎児は法定相続人に含まれるため、出生を待たずにした遺産分割協議は、相続人の一部を欠いたものとして無効となる。母親が胎児の法定代理人として協議に参加した場合も同様。
■形見分けは自由にできる(形見分けとは、故人の愛用の衣類や時計等、身の回りの物を分けること)。
ただし、相続放棄や限定承認を希望する場合、形見分けの品が特に高額な場合には、単純承認とみなされる場合もあるので注意が必要です。
■相続人の一人が遺産分割前に自分の法定相続分を処分した場合には、その法定相続分を譲り受けた人を、必ず遺産分割協議に参加させなければならない。
■相続人の一人が無断で遺産を処分してしまった場合には、他の相続人は、勝手に処分した相続人に対して、自分たちの相続分を返却するよう請求できる。
その相続人が請求に応じない場合には、相続回復を請求する調停や審判を家庭裁判所に申し立てる事が出来る。
ただし、処分した財産が動産の場合、取得した第三者が何も事情を知らなかった場合には、返還を請求できなくなる場合がある(即時取得)。
遺産分割協議は、原則として一度成立すると、もう一度やり直すことは出来ません。
ただし、下記のようなケースであれば、一部または全面的にやり直すことができます。
遺産分割のやり直しが認められるケース
以下のようなケースでは、例外的に遺産分割のやり直しが認められます。
1)遺産分割の際に、相続人の意思表示に詐欺・強迫・錯誤などがあった場合
遺産分割協議の際に、相続人が他の相続人に騙され、あるいは脅され、または勘違いをして合意をした場合
(例)相続人が他の相続人に「故人には財産はない」などと騙されていた場合
2)分割後に、分割時の前提条件が変更された
発見された遺産が重要で、その遺産があることを知っていれば、このような分割協議はなされなかったであろうと考えられる場合
(例)被相続人が高額の特許権や著作権を有していたことが、後日判明した場合
3)相続人全員が合意した場合
相続人全員が、すでに成立している遺産分割協議の全部、一部を合意により解除した上、改めて遺産分割協議を行うことも可能です。