種類株式の活用法

中小企業の定款の整備

1)定款とは?

 経営者が亡くなった場合、経営者(取締役)=所有者(株主)ではなくなることがあります。
 また、株主に相続が発生した場合、経営者が全く知らない人間が株主となることも考えられます。
 こういったときに、定款をきちんと整備しておけば、ある程度相続に関するトラブルに会社が巻き込まれることを、予防することが可能です。 

 定款とは、国家で言うと「憲法」に相当するもので、会社の根本規則です

 この「定款」をきちんと整備しておかないと、事業の後継者の方たちが、思わぬところで足をとられる可能性があります。
 したがって、事業を承継する前に、まず定款の整備をしておきましょう。  

2)相続対策への活用法

 相続対策として、定款に定めることにより、相続によって株式を手に入れた相続人から、会社が強制的にその株式を買い取ることが出来る規定を設けることができます。
 例えば、ある女性の社長が株式を60%保有していて、残りの40%の株式を社長の長男が保有している会社があるとします。このような場合に、もしもその長男が不幸にして事故で亡くなり、持っていた株式のすべてを「長男の嫁」が相続したらどうなるでしょうか? 「嫁と姑」の共同経営という状態になります。この先うまくいくでしょうか?
 こんな場合にも、『定款で定めておけば』、長男の嫁が相続した株式を、会社が強制的に買い上げることが出来るのです。

 もっとも、この制度は裏目に出ることもあります。例えば株式の80%を社長Aが、残りの20%の株式を同族以外の出資者Bが保有しているような会社で、Bが死んだ場合に備えてこの「相続人からの株式買取請求」の規定を定款に設けておいたところ、Aの方が先に死んでしまったような場合には、何もなければAの配偶者や子供が株式を相続し、会社を承継するはずのところ、株式の買い取り請求を受けてしまい、結局Bに会社を乗っ取とられてしまうといった事態もありうるからです。

 こうしたことを防ぐためには、Aが生前にある程度の株式を配偶者や息子に移転しておく必要があります。
 なお、相続人からの株式買取請求の対象となるのは「譲渡制限株式」のみです。ただし、買取請求をする株式に譲渡制限がついていればいいので、この制度は一部の株式のみに譲渡制限をつけているような会社においても利用することが出来ます。 

種類株式の発行に関して

1)9つの種類株式

 事業承継や相続対策に最近良く使われるのが種類株式です。
 種類株式とは、会社法の規定の範囲内で、定款に定めることによって、株主の権利について普通株式とは違った権利を付与したり、株主の権利の一部を制限または剥奪した株式のことです。

 以下の9つの権利について異なった種類株式を発行することが可能です。 もちろん、9つの権利のうち、いくつかの権利を重複して付与したり、いくつかの権利を制限または剥奪をした株式を発行することも可能です。

1.剰余金の配当 (配当を多くすることなど)
2.残余財産の分配 (会社を清算したときに分ける財産の分配)
3.議決権制限種類株式 (議決できない決議事項を設けること)
4.譲渡制限種類株式 (売買などでの株式の取得に会社の承認を必要とすること)
5.取得請求権付種類株式(株主がこの株式の取得を会社へ請求することができること)
6.取得条項付種類株式 (一定の事由が生じたときに会社がこの株式を取得できること)
7.拒否権付種類株式 (いわゆる黄金株。特定の事項につき株主に拒否権を持たせること)
8.全部取得条項付種類株式(株主総会の決議で会社がこの株式をすべて取得できること)
9.取締役・監査役選任権付種類株式 (この株式を持つ株主から取締役や監査役を選ぶことができること)

 種類株式を発行する場合には必ず、各種類株式の発行可能株式総数も一緒に定款で定めてく必要があります。種類株式の発行の定款変更決議のときにあわせて定款変更をお勧めいたします。 

2)議決権制限株式の活用法

 例えば、オーナー社長が株式を100%握っている株式会社があり、その社長には長男と次男の2人の息子がいるとします。そして、社長が高齢でそろそろ引退し、会社の経営を長男に任せたいと考えている場合に、もしいきなりその会社の株式を全部長男に譲ってしまえば、多額の贈与税が課せられることになります。
 ちなみに、株価というのは会社の業績が良いほど高額になりますので、業績の良い会社ほど、贈与税の問題から事業の承継が難しいというジレンマに陥り易いのです。

 このような場合、例えば株式のうちの50%を議決権のない株式にして、その議決権のない株式は引き続き自分が保有し、議決権のあるほうの株式のみを長男に贈与すれば、長男は実質的には会社の経営の決定権をすべて握ることができますし、贈与税も全部の株式を譲るよりは安く済みます。

 また、その後オーナー社長が亡くなって、残り50%の株式を例えば次男が相続したとしても、次男が相続した株式には議決権がありませんので、長男の会社経営に口を出すことは出来ません。つまり、会社の経営権を巡って兄弟げんかが起こることを、未然に防ぐことが出来るわけです。

 この例では、さらに長男に譲る株式を、議決権はあるが、剰余金の分配額が少ない株式(議決権のある劣後株)、オーナー社長の手元に残す株式を、議決権はないが、剰余金の分配額が多い株式(無議決権の優先株)にしておけば、長男に譲る株式の評価額をさらに抑えることが出来るので、贈与税・相続税対策としてより有効なわけですね。

 さらに、長男に承継させる株式に「譲渡制限」をつけておけば、株式の評価額はさらに下がりますし、自社の株が見知らぬ第三者の手に渡ることを、防ぐこともできるわけです。
 また、「死ぬまで現役で経営する」という方についても、とりあえずその株式の50%を「議決権のある劣後株:A株」、残り50%を「無議決権の優先株:B株」にしておいて、遺言書で「A株は長男に、B株は次男に、それぞれ相続させる」と書いておけば、自分が死んだ後、会社の経営権を巡って兄弟が争うといったことを防ぐことが出来ます。

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